日本女性会議とやまについての報告


 1017-18日に富山市で開催された日本女性会議2008とやまに、当研究会から荻上、斉藤が参加した。この会議の参加者は2600名と男女共同参画運動としては日本でトップ級の規模を誇る。しかし、参加者からの聞き取りによれば、全国の自治体関係者が日頃つきあいのある民間団体関係者とのバス旅行で親睦を図る目的を兼ねているという面もあるという。実際の会場は加藤登紀子による歌や富山の民謡などが賑やかに披露されお祭り的な要素も随所に見られるものであった。

 日本女性会議とやまではお祭り的なイベントが多く、情報メディアをテーマとした分科会やフォーラムがまったくないことから、当研究会では独自に1018日富山市の会場近くで当研究会の荻上による「大人から始めるインターネット」という企画を実施した。地元富山の方や日本女性会議に参加されている大阪、広島からなど約20名の熱心な参加があった。Lanに接続してネット情報を見せながらインターネット情報について「ネットいじめ」や「学校裏サイト」などの課題があることが話された。

 また、この日本女性会議とやまは、いわゆる「バックラッシュ」派と目されてきた首長が音頭をとって開催した男女共同参画イベントであった。これまで「ジェンダーフリー論争」や「ジェンダー」に対するバックラッシュの議論では、「バックラッシュ」勢力対「男女共同参画」勢力といった図式で語られることが多く、モグラたたきのようでも一つ一つ対抗手段をとっていく必要があると指摘されてきた。しかしながらこの日本女性会議とやまは、これまでの「バックラッシュ」の分析ではとらえきれない妥協的なイベントであった。男女共同参画政策の評価については、二元的ではない新たな分析方法が考察される必要があるように思われる。


NWEC夏の交流フォーラムへの参加報告

         

        

 2008829-91日、埼玉県嵐山町にある国立女性教育会館(通称NWEC)で開催された「男女共同参画のための研究と実践の交流推進フォーラム」に当研究会から荻上、斉藤が会場に足を運んで参加し、メディア・コミュニケーションと男女共同参画についてをテーマとするワークショップに直接参加した上で、トップダウンの男女共同参画の流れが現在どのように進行しているのかを分析した。また、当研究会からは新たな方向性となるワークショップ企画を実施し、現状に対する対抗モデルを提示した。当研究会が行った企画は、 「情報発信メディアと男女共同参画の視点ーミニコミからインターネットまで 多様な取り組みから」というワークショップである。このワークショップには当研究会4名全員参加(小山、山口はオンライン参加)、他に6名の研究者、実践者にパネリストとして参加していただいた。会場には約30名が集まり活発な意見交換が行われた。

参加したワークショップでは、全国の男女共同参画センターが規模の縮小もしくは指定管理への移行などにより縮小傾向が見られるということで、常勤、非常勤スタッフや地域の男女共同参画運動関係者は危機感を募らせていた。それに対して、女性学やnwecから出される男女共同参画政策は、依然として従来通り「女性情報でエンパワーメント」「ワークライフバランス」「ひとつ働き方を変えてみよう。カエル!ジャパン」などnwec、世界女性会議などの情報を民間に下ろしていくトップダウン型を堅持し、地域で起きている不況や地盤地下の現実と遊離した非現実的な男女共同参画政策を浸透させようとしていることがわかった。また、在留外国人やエスニックマイノリティ、クィアなどの話題も出てこず、情報といえば図書館の書籍情報が中心で多様性がなく、情報テクノロジーの進展にも無関心であることが判明した。

そうした、人々を一様にとらえた、多様性への視点が欠けたトップダウン型男女共同参画政策の浸透に対して、こちらは対案的なワークショップを開催した。

 対案をなす要素は、第一に、現在主流の「男女共同参画政策」枠から外されがちな、「クィア」に焦点をあてることで、既存の「ジェンダー」枠や主流の「セクシュアリティ」のありかたそのものを疑い、より多様な現実をみすえたコミュニケーション課題について考えたことである。運動の使うメディアがミニコミからインターネットと変化する中で生じている、フェミニズム運動やクィア運動におけるコミュニケーションの課題についてさまざまな提起があった。

 第二に、中産階級中高年の女性(および年金生活者の男性)を対象としがちな「男女共同参画政策」に対し、当ワークショップでは20代、30代の声、性別二元制やヘテロセクシズムに疑義を呈する声など、多彩な声を反映する必要性を明らかにした。

 

 第三に、当ワークショップにおいて、インターネットを通じてアメリカの2つの都市に住む当研究会メンバー山口、小山による映像、音声つき議論への参加を実現したことで、限定されたフォーラム参加者内のみならず、nwecの男女共同参画フォーラムでの議論を外部にも広げる新たなモデルを提起した。

 なお、当研究会のワークショップは、後日インターネットを使った動画配信も行い、参加者によるブログでの報告も行われた。ワークショップについての報告は、こちらで詳述されている。

 

 

 

 

 

 

 

フェミニズム、男女共同参画とネット問題研究会

「ジェンダーフリー論争」以降のフェミニズム運動の流れをクリティカルに検証し、メディア・コミュニケーションの利用という視点から問い直す研究会を、2008年12月に開催する。(グローカルフェミニズム研究会と、フェミニズムとネット問題研究会の共催による、クローズドの研究会。)

フェミニズム運動体のネット、メディアの使い方や情報伝達のありかたが大きな問題として浮かびあがってきた最近の状況を鑑み、ネットと運動をテーマとして検討する。また、背景となるフェミニズム運動の流れについて、メディア、コミュニケーションという観点から再考し、女性運動の歴史の中に再定位する。

リブ/フェミニズム/男女共同参画/女性の政治参画運動の変遷と、メディア状況が変わりつつある現在において見えてくる問題、限界について議論する予定である。参加予定者は、当研究会の斉藤、山口他、フェミニズム研究者、運動家6名の予定。

富山でのインターネット研究集会

 

 10月18日富山市のオークスカナルパークホテル檜の間で荻上チキを講師として「大人から始めるインターネット」という研究集会を開いた。富山市で開催されていた日本女性会議に参加されていた大阪、広島の方などの参加があった。日本女性会議では、情報社会、ネット発信、ネット社会などに関する分科会や講演がなかったので、男女共同参画とネットに関する問題がどうなっているのか、情報収集を兼ねてこのような研究集会を開催した。

 荻上は、会場からネットにアクセスし実際の「学校裏サイト」につなげ、参加者の質問に答えつつ、以下のような話をした。

 ケータイやネットというメディアは「この社会のあらゆる人やものをつなげる道具」。だれもがネットにつながるゆえに「子ども」にもつながる、すべてにつながるということで予期せぬリスクが生じる、犯罪やメッセージが誤配されることもつながる。しかしながら、ケータイインターネットの利用率は、6-12歳で急増中である。しかも年長者はアドバイス出来ない。教育が成立しない中で利用が進んでいる。とりわけ子どもが先に進んでいる状態であることにこの問題の難しさがある。特に、ネットは闇社会などとそれに触れていない人ほど「ネットはこわい」とみなしがちである。メディアの影響は、自分よりも他者の方に大きいとみなす「第三者効果」により、必要以上に規制を主張するような動きも懸念される。福田元首相が、ネットいじめを防止するために、ケータイを使わせないと言ったことがあったが、一種必要な道具となっていることを無視した発言であった。解決策としては、一般的には、1)問題の正しい所在を知り、2)有効な対策を考え、3)可能な形で実行する、4)新たな問題を発見する、というプロセスを繰り返しつつ、上手な使い方を共有するしかない。

 

 この研究集会については、荻上チキさん富山集会の報告 において報告されている。

 

 

 

NWEC夏フォーラムでのワークショップ

NWEC(国立女性教育会館)にて8月29〜31日の日程で開催される「男女共同参画のための研究と実践の交流推進フォーラム」にて、「情報発信メディアと男女共同参画の視点——ミニコミからインターネットまで 多様な取り組み事例から」というタイトルでワークショップを行った。8月30日(土)16時から18時まで、マルチメディア研修室にて。参加したのは、当グローカルフェミニズム研究会の荻上チキ、斉藤正美、小山エミ、山口智美の全員のほか、ミヤマアキラさん、tummygirlさん、飯野由里子さん、マサキチトセさん、川口遼さん、井芹真紀子さんというメンバーである。

  • 情報発信メディアと男女共同参画の視点:ミニコミからインターネットまで 多様な取り組み事例から
  • 男女共同参画メディアネットワーク+デルタG
  • 国立女性教育会館 男女共同参画のための研究と実践の交流推進フォーラム 
  • 日時:2008年8月30日(土)午後4時〜6時
  • 場所:国立女性教育会館マルチメディア研修室

【概要】

コミュニケーション空間における葛藤——発言者に対する一貫性や可視性への要請と、安定した一貫性に回収されない交流への欲望との——は、決して珍しくはない。だが、性的マイノリティの存在主張に関して、「クィア」の視点をとりこむと、この葛藤はとりわけ切迫した問題となりうる。本WSでは、個人を特定の「人格」や「要素」に還元する「パッケージ化」の欲望と、「パッケージ化」を逃れようとする欲望との葛藤に焦点をあてつつ、クィアなコミュニケーション空間の可能性について検討したい。

司会:前半 井芹真紀子、後半 マサキチトセ

発表:飯野由里子、マサキチトセ

レスポンス:荻上チキ、ミヤマアキラ

このワークショップの案内チラシです。

このワークショップの案内や報告は、ふぇみにすとの論考荻上式FemTumYumデルタG(動画での報告)、 Demilogジェンダーとメディアブログ など数多くの参加者のブログなどで報告され話題になった。

3月アジア研究学会でのパネル

2009年3月にシカゴで開催される、アメリカのアジア研究学会(Association for Asian Studies)年次大会において、日本のネットやリアル政治の場での「ジェンダーフリー論争」とフェミニズムに関するパネル企画 “Gender-Free” Backlash on the Internet and Beyond: National Politics and Feminism in the 21st Century Japan” が受理された。
アジア研究学会において、日本のネット文化に焦点をあてたパネルが開催されるのは、初めてのことだろうと思われる。

当研究会より、山口、荻上、小山、斉藤がパネリストとして参加。ほか、フリー研究者のローレン・コーカーさんがパネリストとして、シカゴ大学社会学部教授の山口一男さんがディスカッサントとして参加する。

研究プランの概要

1990年代以降進められた男女共同参画政策や、行政から組合、教育現場へと広がっていったジェンダーフリー教育に対し、2000年以降批判の動きが生じた。特に男女の性役割の重要性を唱える保守派による主張は、新聞や雑誌など従来のメディアに限らず、ホームページ、インターネット掲示板、ウェブログなど新しいメディア・ツールを駆使して展開された。

本研究では、日本の男女共同参画政策の現状とフェミニズムと保守運動の係争について、批判対象となった 「ジェンダーフリー」という言葉が 「発見」された1995年から現在に至るまでの歴史を、コミュニケーションメディアとの関わりという視点から検討する。男女共同参画をめぐり注目を集めた地方の現場では実際にどういったことが起きているかを現地での綿密な調査により明らかにし、また大都市圏と地方との都市間経済格差、階級的な格差、世代間の格差、国際移動といった視点を入れて考察する。フェミニズムとナショナリズムの交差という事例をみることで、コミュニケーションメディアが市民運動や社会変化に果たす影響についても考察する。異なる場所で学問研究をし、専門領域を異にする研究者による共同プロジェクトを組むことで、ネットでの言説とリアル社会との交錯について多様な方法論を使い、公開の研究会において幅広い観点からの議論を積み重ねることで解明する。